妊娠届時のアンケート

妊娠届は、妊娠が確定した後、母子手帳と妊婦健診の受診券を発行するための届け出です。
妊娠届を発行する際に、自治体によって異なりますが、妊娠に関するアンケートを書いていただくことがあります。
アンケートの内容は決まっておらず、自治体によって様々です。
例えば職業・出産場所・妊娠回数・疾患の有無・流産死産の有無・サポートの有無・パートナーの情報・被虐歴の有無…等
そのアンケートに対して、少し前、新聞で「配慮に欠けている」「記入した情報を、活用できていない」との記事がありました。
記入する側からしたら、そうですよね。
ただ、私たち保健師は、むやみやたらと情報収集しているわけではなく、意図を持って情報収集しています。
アンケートの内容によっては、書きたくないこともあります。思い出したくない、辛い過去もあります。
アンケートなので、書きたくなければ「その事項は書きたくありません」と拒否してもらって大丈夫です。そのようなお返事をいただいたことは、もちろんあります。

そもそもアンケートは何のために書くの?

そのアンケートに沿って情報収集し、困っていることがないか、判断するためです。
アンケートなしに情報収集するのは、情報収集する項目が抜け落ちたりするので、難しいです。
もちろん記入したことで不利になったりする事はなく、個人情報は守られます。
アンケートの内容として例えば・・・
・仕事をしている→職場からの配慮はあるか?なければ妊婦として得れる配慮を紹介
・妊娠中や出産後のサポート体制はあるか→なければサポートをしてくれるサービスを紹介
・妊娠中や出産後に関する不安はあるか→不安に応じて相談
・きょうだいの有無→妊娠中、妊娠・出産に伴う入院、出産後のきょうだいの面倒を見てくれる人はいるか、いなければ産前産後の保育所利用など使えるサービスを紹介
・妊婦自身の既往歴や家族の既往歴→妊娠中や出産後の体調に注意 等
ここまではよく聞かれる範囲で、比較的答えやすい質問かと思います。

ここからは、聞かれると不快に思う方もいる質問事項かと思います。
・パートナーの有無、入籍の有無
・パートナーの年齢や職業
・流産や死産の経過があるか
・妊娠した時の気持ち
・パートナーや実父母・義理父母との関係性(気軽に相談できるか、あまり相談できないか)
・妊婦自身やパートナーが虐待など受けた経験があるか
・経済的な状況
本人が言いづらい事項を深く聞いていくのは、保健師側としても正直緊張します。
どのような妊婦さんでも、今後何かあったときに“保健師に相談しよう”と思ってもらえるよう、「初めて会った人に無理やり聞かれて嫌な思いをした」という印象はできるだけ残さずに情報収集して、必要なサービスを提供したいと思っています。
なので妊婦さんの顔色を伺いながら、これ以上聞いてほしくなさそうという発言や様子があれば、そっと引いています。

聞いてどうするの?

出産や育児には、経済面やサポート体制の有無がかなり重要となってきます。
経済面やサポート面が不足していて、それを補える状況なのであれば、そのサービスを紹介するためです。
例えば、経済的に厳しい場合、条件が合えば、出産費用の補助をもらったり、シングルであれば出産後に手当てをもらえることがあります。また、市町村によっては、育児物品の費用の補助があったりして、出産後の経済的負担を軽減できます。
妊娠中は仕事ができなくなることもありますし、出産前後は仕事ができません。
なのでパートナーとは未入籍だったり、本人・パートナーがとても若かったり、職が安定していない場合は、経済的に厳しくなる可能性を考え、本人からの希望があれば、相談員と一緒に経済面について詳しく聞いたりすることもあります(一定の条件を満たさないと受けれないため)。

そしてパートナーと未入籍だったり、実父母・義理父母との関係がよくなかったりした場合、妊娠中・出産後の育児のサポートが薄くなる可能性があるため、ほかに頼れるサービスを紹介します。妊娠中や出産後に保護者がしんどくなっていないか、確認の電話や訪問をしたりします。

また、保護者自身が虐待の過去があったりする場合、育児をする中で保護者自身がしんどくなってしまったりする場合があります。どこまでサポート体制があるのか、保護者自身の体調は大丈夫なのか、その様子をそっと見守っていく必要があります。

一見すると、人によっては嫌なアンケートかもしれません。保護者自身が置かれている辛い状況が「辛い」と発信できる人ならいいのですが、上手く発信できなかったり、どこに発信していいかわからない人もいます。
その方々を救うためにも、このアンケートはとても重要なものなのです。
妊娠した時点で、私たち保健師にとって保護者との関りはスタートしていて、必要な保護者には、出産までになるべく関係を作っておきたいと思っています。
そのための入り口として必要なものなのです。

タイトルとURLをコピーしました