産後うつ病とマタニティブルーズ

産後にしんどくなったことはありますか?私はあります。実は第1子を出産後に精神科へ駆け込んだことがありました。その後、保健師として仕事の中でも産後うつ病の保護者と関わってきました。通常でも大変な妊娠・出産・育児をコロナ禍で頑張っている保護者の皆様、本当にお疲れ様です。

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産後うつやマタニティーブルースって何?

マタニティブルーズも産後うつも気分の落ち込みや自責感が出てきて、気持ちがしんどくなってしまうことです。マタニティーブルーズは2週間以内くらいで治まりますが、産後うつ病はマタニティブルーズと違って2週間以上気分の落ち込みや自責感が続きます。産後うつ病について教えてください – 日本産婦人科医会 (jaog.or.jp)
妊産婦さんのこころについて、信州大学の村上寛先生がとても力を入れて情報発信していらっしゃいます。周産期のこころの医学講座|妊産婦さんと、その周囲の方々のこころを考える講座です (shinshu-shusanki.org)

EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)って知っていますか?

出産前後にみなさんが病院やこんにちは赤ちゃん訪問(新生児訪問)などでサラッと記入するEPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)ですが、記憶にありますか?EPDSというのは、保護者に体調に関する質問を10個回答してもらい、その回答を参考に保護者が精神的に体調を崩していないかを確認しています。しんどそうな状況であると、病院が話を聞いてくれたり、本人が希望すれば市町村の保健センターと連携し、保健師が電話や訪問で継続的に支援できる体制を作ります。EPDSを記入してもらうタイミングは基本的に健診の時なのですが

  • 産前の妊婦健診←病院によってEPDSあったりする?
  • 産後2週間健診←市町村によって健診自体なかったりする。
  • 産後1か月健診
  • こんにちは赤ちゃん訪問←市町村によってEPDSなかったりする?

という感じで、最低、産後1ヶ月の時に1回は記入してもらっているはずです。

産後の保健師の関わり

どこの市町村でもそうですが、たいてい産後1か月くらいまではどこかで保護者は支援を受ける機会があります。しかし、それ以降は市町村によって保護者の支援体制がバラバラです。

第1子を出産した市町村では、産婦健診の直後に新生児訪問がありました。保育士さんが突撃訪問来て、育児状況や支援体制、子育て広場の紹介などがあり、他愛ない話をして本をもらいました。そこから4か月健診までは特に何もなく、4か月児健診は個人病院で受診だったので、おじいちゃん先生にさら~っと健診をしてもらい、あっさりと終わりました。4か月児健診が終わると次は1歳6か月児健診を保健センターで受ける、という感じでした。予防接種手帳を妊娠届をするときにもらうので、出産後は何もない限り保健センターに行くことも保健師と連絡を取ることもありません。保健師という存在も把握できていなくて、ほぼ支援がないまま過ごしていました。

第2子を出産した市町村では、生後3か月ごろに助産師さんのこんにちは赤ちゃん訪問があり、育児状況や計測をしてくれました。4か月児健診は保健センターで受診だったので、医師の診察だけでなく保健師にがっつり質問される感じでした。後期健診は個人病院で受診し、その後は1歳6か月児健診を保健センターで受けるという形でした。

市町村によって支援体制はバラバラで、個人的に感じるのは、支援者が少ない身にとって、第1子の時、4か月児健診の保健師の支援は欲しかったなと思います。それか「何かあったときのために…」と保健師の紹介が欲しかったです。この時期あたりで保健師が介入できたら、精神的にしんどい保護者を見つけれる可能性が上がるのにな…と思っています。

第1子出産後に産後うつ病を経験した

結婚して1年ほど経ち、夫の転勤で見知らぬ場所で誰も友人がいない場所へ行きました。実家も遠い状況でしたが、保育園看護師の仕事をしていたので、なんとなく子育てをやっていけるだろうという謎の自信があり、妊娠をしました。県外で働いていた私は住んでいる地域で友人もいないまま出産をし、子育てが始まりました。産後1か月は実家の母が泊りで来てくれ、助かりました。子育て広場は妊娠中に一度見学に行き、ママ友がいなくて孤独だった私は生後1か月で子育て広場にデビューし、ママ友も数人でき、ほぼ毎日子育て広場へ出かけていました。そのような状況で育児をしていたのですが、想像以上に過酷な育児。夫は日付を回って帰宅、実家は遠くて頼れない、子どもはよく泣き寝ない子、疲労感が最高潮のまま過ごしている中、生後2か月の時に外部からのコメントでポキッと心が折れてしまいました。その直後は心が折れたと思っていなかったのですが、生後3か月の時に急に自責感で涙が出てくるようになり、家にいたら我が子の泣き声に耐えれず、ベビーカーで外に出ると、死にたいと思うわけではないのですが交通事故でポンと死んだら楽になるのかなと思ったりするようになりました。

勇気を出して精神科へ足を踏み入れた

自分の中で「こんな気持ちは本当は感じではいけないこと」という思いがあり、誰にも話せませんでした。夫にも友人にも子育て広場のスタッフにも話すことができませんでした。けれど、「このままではダメだ」と思い、近くの心療内科・精神科を探して予約しました。受診日は1か月後くらいの日程でした。受診当日の朝、何も伝えていない実母が遠方からたまたま遊びに来て、出かけようと誘われたので、「今から精神科を受診しにいくの」と伝えた時、実母は相当心配したと思います。でも実母は「そんなところへ行ってはいけない」と否定することもなく、「行っておいで」と送り出してくれました。何も伝えていないのに、たまたま急に来た実母、親子の不思議なところだと思います。
生後3か月の子どもを抱っこしながら、初めての精神科を受診しました。子連れの患者は私だけ。来てよかったのかな…私こんな赤ちゃんを連れて場違い?と思いながら問診票を書いた記憶があります。医師は男性で60代くらい、怖そうな雰囲気もなく、私の話を淡々と聞いてくれました。「産後うつ病っぽいね、お薬はどうしたい?」と聞かれ、「授乳中なのでいりません」と答え、その後半年間ほど3回くらい話を聞いてもらうだけのために、受診をしていました。毎回先生は傾聴してくれ、だんだん精神的にも安定してきたため、引っ越しを機に受診は終わりました。

精神科の壁

産後うつ病の傾向がありそうと思う保護者へ心療内科や精神科への受診を勧めても、保護者自身が心療内科や精神科への壁を感じていたり、祖父母が「受診しなくていい」とストップをかけたり…ということがあります。その気持ちは分かります。私自身も感じていた部分があり、受診をした際は夫にばれないように健康保険を使わず自費診療で医療費を払っていました。けれど、受診が必要なときは必要なんです。しんどい思いや精神科を受診していることを周りに隠す必要なんてなかったな、と今は思います。その時は知識がなくて勝手に内服を拒否したのですが、授乳中でも内服できる薬はあります。「そんなところに行ったら、ずっと薬を飲み続けなければいけなくなるよ」という保護者を取り囲む方々の話を聞くこともあるのですが、薬を飲んでスパッと治るわけではないので、長期的に内服しながら減量していき、やめるという形にもっていく必要があります。環境面も整えないとしんどくなる一方なので、きちんと診断をもらうことで周りに自分の状況を知ってもらい、配慮してもらうというのも必要なことです

心療内科や精神科を受診する際に

心療内科・精神科は受診するのに日数がかかる場合があります。今行きたいと思っても、予約を取れるのは1か月後、というのはよくあることなので、少しでもしんどいと感じた時は受診できるように予約をしておく方がいいかと思います。
それと、どの心療内科・精神科にしようか悩んだとき、私はHPなどで産後うつ病を診療内容などに掲げている病院や女医さんをお勧めしています。ごく稀ですが、「医師が子育てのしんどさをわかってくれなくて…」と突き放された印象を受けて帰ってくる保護者がいるので、私はこのようにお勧めしています。

しんどさを発信してほしい

産後のしんどさは、経験してみないとわからない部分があります。「みんなしんどいのを乗り越えてきた」というのは、たまたまその人は乗り越えれただけであり、それを乗り越えられずに自死するまで追い込まれる保護者もいます。保護者がしんどくなってしまうのは育児をする上で環境面が保護者に合っていなかったり、保護者が頑張りすぎたり、色々な理由があります。育児や家事を少しでも軽減できる方法はありますか?育児を支援してくれる人はいますか?話を聞いてくれるパートナーや友人はいますか?しんどくなったときに、パートナーや友人に言いづらかったら子育て広場のスタッフや保育園の先生でお話しできる人はいますか?
身近にいなければ、気軽に保健センターへ連絡して頂けたらと思います。地区によって担当の保健師がいるので、地区の担当保健師を呼んでもらってもいいですし、電話に出た人に「少しお話聞いてください」と伝えても大丈夫です。こんなことで電話していいのかな?と思う必要はありません。どんなことでも大丈夫です。「まだ大丈夫」という気持ちをズルズル引きずると更にしんどくなるので、「しんどい」と思ったら誰かにそのしんどさを発信していただけたらと思います。

必要なときは医療を

ご飯が食べれない、寝れない、気力がない、無意識に涙が出て止まらない、死にたいと思う、などの症状があるときは、病院受診を勧めますが、なかなか受診をできないこともあります。保護者がいろいろ事情を抱えていたりすることもありますが、できるだけ医療を受けてほしいと思います。産後うつ病は最悪の場合、自死を選ぶ方々もいます。子どもに手を出してしまうこともあります。もし、医療を受けずになんとか回復したとしても、その後も順調にいくとは限りません。心療内科や精神科に行きにくいのであれば、産婦人科でも見てくれるところがあるので、探してみてください。

子育ては大変

子育ては長いです。振り返るとあっという間だと思いますが、その子育て真っ最中の保護者にとっては、一日一日が大変です。子育ては楽しいこともあれば、しんどいこともたくさんあります。そのしんどい感情を癒すのが子どもの笑顔や姿だったりします。ただ、そのしんどさが溢れ出すと、保護者だけでは対処できなくなります。しんどくなったら、誰かにしんどさを発信してください。世間的に心療内科や精神科がもっと身近にかかりやすい存在であったらいいなと私は思っています。

産後ケア・産後ヘルパーの存在

産後、支援者が少ない保護者、身体的・精神的に体調が悪い保護者、育児の手技に不安がある保護者などに対して、市町村が産後ケアや産後ヘルパーという事業を行っています。詳しくはこちら→産後ケアや産前産後ヘルパー | あんなの保健師うら話 (anna-phn.com)身体的に体調が悪くなると、精神的にも体調が悪くなりやすかったりします。是非住んでいる市町村がしているかどうか、調べてみてください。保護者の身体的・精神的負担を軽減するためにおこなっている事業なので、是非利用できるのであれば、利用してしんどさを軽減していただければ嬉しいです。

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