世の中には様々な職業があります。子どもを産んで親になると、「子どもには苦労させたくない」という思いで高学歴を求めたり社会的地位が高いとされる職業を望む保護者も多いのではないかと思います。ただ、その思いが強すぎると、子どもが苦しみ、その結果子どもが母を殺害したという殺人事件が起こりました。その経緯が書かれている本が『母という呪縛 娘という牢獄』という本です。
子を持つ親には読んで欲しい一冊
子どもが生まれ、育っていく過程で、親は子どもに対して「清く正しく育ってほしい」「自分のように苦労はしないで欲しい」「社会的地位の高い職業についてほしい」など、色々思うことはあると思います。勉強をして知識を付け、それを活かすことは大事だとは思うのですが、親の価値観を強く押し付けて、子どもが苦しむのは、教育の範囲を超えていると思います。私自身、このようなことを書きながらも、自分もしてしまう可能性はゼロではないので、子どもが受験をする時は気を付けないといけないと思っています。
自分の子どもに対する教育の考え方を振り返るためにも、読んで欲しいのがこの『母という呪縛 娘という牢獄』という本です。
9年間、医学部の浪人生活を送ってきた女性が、母を殺害してしまう事件のお話です。殺害に至るまでの母娘の様子や、警察に逮捕され、裁判で女性が正直に殺害を認めるまでのお話が書かれており、女性が正直に殺害を認めるところのお話は、涙が出ます。
子どもに教育をするというところに関しては難しいところがあります。実際に大学の実習で精神科を回った際に、とても有名な学校に通われていた方が学業のプレッシャーに押しつぶされ、精神疾患を患い、しんどい思いをしているのも見てきました。教育の加減というところは難しく、本人の能力を超えるような教育をすると、押しつぶされてしまいます。押しつぶされそうなところに気付いて回復できるなら良いのですが、そのまま命を落とす方もいらっしゃるので、子どもの教育に関しては、周りの意見を聞きながら、それが本当に子どもにとっていいのか、子どもが高学歴やエリートであること自体が保護者を満足させるものになっていないのかというところに注意していかないといけないと思います。
実は私も医学部を2度受験していたので、この本を読んで、女性の壮絶さを感じて苦しかった
実は私は現役生の時と大学を卒業後の計2回、医学部を受験していました。そもそも医師になりたいと思っていた理由は後からふと感じたのですが、「親に喜んでほしかったから」という理由が強かったと思います。中学生くらいの時から医療系を志望していて、薬剤師を希望していました。ただ、親からは「医師は社会的地位も高いし、安定した職業だから良いよ」と声をかけられていたので、なんとなく医学部を志望していました。しかし能力的に厳しかったので、看護学科のある大学に入学しました。人の為に働きたくて医療系に就職したかった、けれど看護師になりたいと思って入学した訳でもない、でもとりあえず看護師なら生活に困ることは無い、という中途半端な気持ちで大学は過ごしていました。大学在学中も「医学部をもう一回頑張ってみたらどう?」という声かけを親からされていたので、大学卒業後はそのまま予備校に通いました。医学部受験は国公立しか金銭的に出来なかったので、必死に勉強していたのですが、なんとなく自分の能力は国公立の医学部には達しないなと思いながら勉強をしていたのを覚えています。なので、この本に出てくる女性の9年間の浪人生活は、本当に壮絶だったと思うので、読んでいてとても苦しい気持ちになりました。
私は医学部再受験を1年で諦めました。というよりも、辞める理由ができてホッとしたと言った方が良いかもしれません。当時彼氏だった夫に「一年で医学部を合格できないのであれば、何年しても難しいと思う」と言われ、私は「夫とは別れて、このまま医学部再受験をもう1年頑張る」か「医学部を諦めて夫との家庭を築く」かの2択でした。将来、子どもがどうしても欲しかったのと、研修医の夫を見ていて自分の能力では無理だなと感じ、夫は私との家庭を築くという約束をしたので、医学部再受験は1年で終了しました。それから看護師として働き、たまたま保健師として働き、母子保健分野に足を踏み入れて、私は母子保健分野に魅了され、今のこの仕事が天職だと思っています。未だに親からは「医学部再受験してみたら?」と言われますが、可愛い子どもがいる家庭を持てて、自分の満足した仕事に就いているのがとても幸せで、医学部再受験には全く興味が無く、保健師として精進するために大学院に行きたいと思うくらいです。そう思ったときに、私は医学部を目指していたのは親を喜ばせるためという理由が強かったのかなと思いました。
子どもは親を満足させるものではない
私は子どもに「医学部へ行きなさい」とは言えません。医学部の受験は壮絶だったからです。自分が経験してしんどかったことを子どもには押し付けられません。別に高学歴やエリートでなくても幸せかどうかは自分が決めるものですし、高学歴やエリートだから幸せかというと、そういう訳でもないと思います。勉強は生きるために必要なものではあるので、ある程度の勉強は必要であることはこれからも伝えていきますが、その時に自分が価値観を子どもに押し付けてしまう可能性もゼロではないので、気を付けないといけないなとは思っています。
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